「…ヨシトか。こんなところに居ていいのか」




「いいんだ。
アカネが連絡もしないでどこかに行ってしまったからね」





「それでも秘書かよ」





「アカネは部下を付けて行動しない人なんだ。
だから、こんなことは習慣の一部だから…それでも重要な時は頼りにしてくれる」





「それで、秘書は今暇人ってことか…」





「そういうこと。
そしたら、伊藤から山本に合わせたい人がいるって連絡が来たからね」






「俺に合わせたい人…」





「まあ、知りたいのなら、車に乗ってくれ」








俺は考えた。
だが、アカネの部下の点で危険は少ないだろうと考えた。
俺は車に乗り込んだ。







ヨシトが車を運転し始めた。






「俺をどこに連れて行く気だぃ」



「エレクトロニクス社だ」







「どうしてだ」






「忘れたのか。君のお父さんが社長を務めている会社じゃないか」







「俺の親父はそんな会社名のところじゃない」








「変わったんだ。社名がね。もう八年前に社長が変わり、山本のお父さんが社長に就任したんだ」







「あの親父がね…」







「俺たち『W』としても、関わりの深い会社なんだ。
ドライブシステムの設計・開発やキャンセラーの生産等で御世話になっている会社だ」







「俺は親父に会いたくない」








「そういうな。十年ぶりの再会なんだろ。少しは喜べよ」









「興味がない」











「ほら、着いたぞ」