…−−−…


電話の呼びだし音が妙に響く。


「はい、もしもし♪」


見慣れた番号に、ついつい声が明るくなる。


「…乃里子?」


電話の向こうからは、誰の声も聞こえてこない。


「どうかしたの?
乃里子?」


呼びかけに返事がない。


『…今どこ?』


ようやく聞こえてきた声は、小さく震えているように聞こえた。


「家にいるよ。
…乃里子、泣いてるの?」


『…今から行っても良い?』


「…もちろんだよ♪
待ってるね?」


『…うん。
ありがとう。』


小さい声が消えると、ツーツーと寂しい機械音が聞こえてきた。


それはまるで乃里子の心を表している様だった。



…−−−…