漠然とした不安を、そんなはずがないと言いきかせて、ラディウスは謁見室へ向かった。


国王の謁見室。
そこは、国王の威厳を示すために、常にすべての灯りが灯され、煌びやかな装飾は光り輝いていた。
しかし、今や、謁見室を照らす灯りは、国王の左右にある二本のキャンドルしかなく、色とりどりの装飾は輝きを失っていた。
それだけではない。
謁見室には、国王だけでなく、常に宰相と三人の大臣、四人の王国兵がいるはずだった。
しかし、謁見室には、父である国王と、叔父である宰相、そして、第二王子である自分しかいない。
明らかに、異常なことだった。

「……お呼びですか、父上」

「息子ラディウスよ。いや、預言獣リリス。貴様を、追放する」

ラディウスは眼を見開いた。
絶望感がラディウスから力を奪う。
ついに、立っていられなくなって、ラディウスは膝をついた。

「そんな……父、上……どうして」

ラディウスは慈悲を願った。
しかし国王の瞳は既にラディウスを息子として写っていなかった。
その瞳に描かれた感情は、激しい嫌悪と、強い恐怖。

「私を二度と父と呼ぶな。幻獣妃の妹、預言獣リリスを宿す者よ」

何かがひび割れる音がした。
その瞬間、身体に衝撃が走り、視界が暗転した。

「兄、様……」