走りだそうとした、その時だった。 背後で、バタンッ、と音がしたのだ。 振り返る、 男が倒れていた。 ………な……ん…。 「あの……!ちょ、だ、大丈夫……?」 嘘でしょう!?気絶?い、意識は!?意識あるよね!? もう頭の中はパニックで……。 そうだ、救急車!、 そう気づくまでに時間がかかってしまった。 カバンの中を漁り、携帯電話を探していると男が何かを言った。 それは、雨音にかき消されて、うまく聞こえない。 焦る私は、男の口元に耳を近づける。