マンションのエントランス、エレベーターに乗ってからも、ジンは私を降ろそうとはしなかった。 少しずつ空へと近づくエレベーターの中で、ジンは言った。 「今夜は星が綺麗だねぇ。」 「…………。」 ジンが見上げている空を、私も見上げた。 出会った時に、ジンは言ったっけ。 ― 「東京でも星は見えるんですね。」 私も、知らなかったんだよ。 空を見上げることなんて、なかったから。 東京でも、星は見えるんだね。 「ジン…。」 「ん?」 「……目閉じて?」