飼い主に忠実な、利口なペットなんでしょう?




だったら……だったら!勝手にいなくなったりしないでよ!










マンションのエントランスから外へ出て、私は周囲を見回す。




夜空には幾千もの星が輝き、咲き誇った桜の花が春の風に揺れていた。







あてもなく、私は走る。


灰色の地面の上に、点々と白い花びら。










「ジンー!ジンーっ!!」












格好悪くて、情けない。




プライドも恥ずかしさも捨てて、私はジンの名前を叫ぶ。





交差点を駆け抜けて、ジンと出会ったカフェの軒先も、近所のコンビニも。



さらに、その先の公園まで…………。