「いやあ、驚いたよ。この辺りはこんな感じだから、
君みたいにのたれている連中も少なくないのに。
助けて欲しいって、引きずってきたもんなあ……こんなの初めてだよ」


……誰が、オレを救ってほしいと願った?

もうオレの周りにはオレを欲する人間はもういない筈なのに。

その疑問を尋ねようとした次の瞬間だった。戸の開く音が聞こえたのは。

オレはその方向に首だけを向けると、そこにいたのは……。


「もう、身体は良いの? イツキ。まだ寝ていても良かったのに」


あの時オレに近付いてきた男だった。

薄い灰色の髪を揺らし、青い瞳でリクの方を向いていた。

イツキと呼ばれたその男は、リクの問い掛けにペコリと頷いた。

リクは“そう”と呟くと、その様子に目元を緩ませ、微笑んだ。

思わず目を見開いて奴を見ていたからだろう。

リクはこの“イツキ”という男の事を説明しだした。