僕と風太と隼人の3人は横浜中華街で豚まんを頬張っていた。横浜の豚まんは、半田市で売っている豚まんよりも一回り大きくて、噛むと肉汁がジュワーと溢れだしてくる。その肉汁が格別においしい。
 僕は2つ目を食べていた。風太は5つ目に突入していた。隼人は早々と2つ平らげてコーラーを飲んでいる。
 せっかくロードバイクを買ったのに、ツーリングにも行かずに別れてしまうのも可哀想だということで、風太と隼人の親は子供が8月20日か21日頃に横浜に来てくれればいい。3週間でツーリングにでも行って来い。と、背中を押してくれた。3週間で本州1周すると決めて半田を出発したのが7月31日だった。なんとか3日で横浜に着く事が出来た。横浜まで来るのに一番の難所は標高846メートル箱根峠だった。上り坂が永遠と続く。あっ、下りになったと思えば、たった今下った分も上らなければならない急勾配の上りがあり、期待を裏切られて気持ちが折れる。少し休憩して仕切り直して頑張って上って行くのだが、山頂が見えない上りに諦めて、上って来た坂道を下りたいという衝動を3人で励まし合いながら上りきった。最後の2キロほどは自転車を引いて歩いてしまったけど。山頂に着いた時に広がっていた抜けるような青い空。大量の汗が流れて乾いて白い粒粒がヘルメットの周りに固まっているのを笑いあって、携帯電話で写真を撮った。山頂にはオートバイの集団や自転車の集団の多くの人がいた。オートバイでツーリングしているおじさんがジュースをおごってくれた。
 「おじさんも小学生の時に自転車で箱根峠を上った経験がある」
 自分の経験談からオートバイを好きになったところまで長い話が続いた。そのおじさん、ビジネスホテルの社長さんで、全国に100箇所ほどホテルがあるそうで「ただで泊めてあげるよ」と、名刺を渡してくれた。で、ビジネスホテル山下公園前に宿泊して横浜を楽しんでいるのだった。
 「ねえ、横浜に何日いるの?」
 3週間しかないのに、こんなに呑気にしていていいのか? と思いながら聞いたが「大丈夫、大丈夫。今日は休もうぜ、筋肉痛が治ってから出発だ」と、隼人はクレ