俺は肯定の意味を含め、頷いた。


すると、ポチはそうッスか……と言った。



「九条さん………友達は1人って言ってたんス。

実は俺も九条さん呼び出したことがあって、そのとき子分が言ったんスよ。」




ーー…お前と友達になる奴はバカだって。



そう言ってポチは俯いた。



「そしたら九条さん。キレたんスよ。眼鏡踏んづけてまで。それまで何言われても平然としていたのに………それほど、その友達が大事なんだな、って思ったッス。」


唯一無二の友達。

大事なんだろうな、鈴にとっては。



誰よりも。



「でも、よく考えたら、それって悲しくないッスか?
俺、九条さんが“その友達を大事にしなきゃ”っていう思いに縛られてるようにしか見えないッス!」


「………え?」



俺はハッとした。


そう、アイツは約束を守っている。



だから1人でいる。
だから友達を作らない。



するとポチが俺の手を握った。



「お願いッス…。九条さん、ときどき悲しそうな顔をしてるッス。

………九条さんを、元気にしてやってほしいッス。」



その言葉を聞いた俺はフッと笑った。



「誰に言ってんだよ。
そんなこと、…当たり前だ、ボケ。」


そう言い残して俺は教室へ向かった。