喧嘩は1対6
数的には1人のほうが圧倒的に不利。
なのに、その人は1人で十分6人を相手にしている。
強いな、あの人。
あたしは客観的にそんなことを思った。
薄い、灰色っぽい髪色。
細く見えるのに拳は重そう。
顔は見えないけど、全体的に綺麗な男の人という印象だ。
バキッ…
ドスッ…
「てめぇ…七瀬ェェ……」
やられているほうの、最後に残った一人が呻くように言う。
そいつ以外はもう完全に気を失って戦えない。
凄い……
強いんだ。
あたしは喧嘩に集中していた。
だから、気づかなかった。
あたしは後ろから首元に腕を回されて、捕まってしまった。