7つ真珠の首飾り

しかし、あんなことをいきなり言い出すなどとは。
孫に、一体何があったというのだろうか。


「……まさか」


こっそりと呟く。
脳裏に浮かぶのは、色褪せない、うつくしい姿と、きらきらと眩し過ぎた日々の残像だ。


とん、と野菜を切り終わった包丁を寝かせ、背筋を伸ばす。

二階の自室で、もしかしたら今頃深い思索にふけっているのかもしれない、孫のことを思った。


そして突然、あの部屋に飾ってある風鈴のことを思い出す。
あれはあの日、恐ろしい真珠を持ちかえるのに使ったまあるいガラスの入れ物を、知り合いに加工してもらった、この世にたったひとつの風鈴――


窓の外を一筋の風が通り過ぎた。

聞こえるはずもない涼やかな音が、警鐘のように頭に響いた。


「まさか、な」


胸をよぎる可能性と、それに対する危険信号を、わたしは意図的に押し殺した。


そう、有り得ぬことではない。
だがそれを認めてしまっては、ことが起こらぬようにはからうことが、恐らくは経験者としての義務なのだろう。

だけど、もう1人の自分が呼びかける。
それは過去にいる、少女の姿をした自分だ。


あの時間をかけがえのないものに思えている今の自分に、笑いかけてくる、少女の自分。


そんな幻を見ながら、わたしは料理の手を再び進め始めた。










Fin.