(――) 何も言うつもりはなかった。 ウィリアムが死んだ時もリディアの異常ぶりを、ハザマは知っていたから。 泣きむせぶ声を聞く度に胸がしめつける思いになった。 ぎゅっと胸を押さえ、痛みをこらえる。 「リディア……」 呟いても、叫んでも、きっと自分の声は“届かない”だろう。 だって、リディアが愛しているのは“現実にはいない”のだから。 今日もハザマは黙って立ち去った。 いつか、認める日がくるだろうと。