声帯がはちきれんばかりの叫び声が響く。
怖くも、私がハザマさんから離れることはなかった。
虫の息なのに、さっきから逃げろ逃げろと言ってくれる人を見過ごせない。
ぎゅっと抱きしめて、キストを威嚇するように睨んだ。
「ああぁあぁぁ!もう嫌だ、こんなの見たくない!リディアは俺だけの俺だけのものなのにっ、みたく、見たくない!」
「キスト……っ」
息を呑んだのにはわけがある。
いきなりキストが自分の顔に刃を向け――
「――――」
右目をほじくり返した。
「キスト、キスト!」
こだます絶叫に混じる私の声。
さすがにこれには黙って見ているだけができず、愚かもがなキストに近付いた。
いくら嫌っても大好きだった私の息子だ。右目を己でほじくり返した人をほうってはおけない。


