でも些細な抵抗だったらしく、キストは振り上げた包丁を私の顔に――
「やめろ、キストっ!」
下ろす寸前、ハザマさんが割り込んできた。
後ろからキストを羽交い締めにしたものの、発狂並みに暴れるキストを押さえきれずに床にふす。
「ハザマさん!」
血だらけだった。
頭や顔が特にひどい。
動けているのが不思議なほどの体に私は寄り添い、声をかけた。
「ハザマさん、ハザマさん!」
「リ、ディア……」
虫の息だった。
目がうつろで今にも永遠の眠りにつきそうな。
「やだ、やだっ」
抱きかかえる。
キストからハザマさんを庇うようにして。
それを見たせいか、キストが握りしめた包丁が震えた。
「なんで……。なんで、そいつなんか庇うんだ。君を守っているのは俺だ、俺だけだ!君に愛されていいのは俺だけ!なのに、なのになのになのにっ。どうしてそいつなんかを……!あ、ああっ」


