妖しく微笑みを浮かべるカインに寒気を感じていると、ニルは無表情に告げた言葉が地雷だった。
「男じゃないのか?」
冷静に言われたそれにピクリとカインが反応する、
「男?」
「ああ、」
カインの表情が一瞬で凍り付き、恐ろしいほどの無表情になる。
「………帰るよ」
静か過ぎる一言と共に紙吹雪は白い翼となり、バサリとはためくと同時に消えた。
数分がやたら長かったように感じ、軽い疲労感を伴う。
ニルはミラに振り返りそっと抱きしめ肩に頭を乗せた。
「うるさかったね」
「え……、びっくりしたからなんていうか……」
言い淀む彼女にクッと笑いながらニルは続ける。
「余裕なさすぎて面白いよ、変態嗜好はどうでもいいけど………男はあり得ないのに」
自分で言っておきながらあり得ないと言う彼を不思議に思いながら背中を抱くと楽しげに揺れた。
「俺たちは考えるだけで知りたい情報は手に入る。
約定があれば別だけどそれ以外は筒抜けで、しかも人間なんかに触れさせると思う?」
「でも、」
「俺ならあり得ない、理由があったにしても誰にも触れさせたくない。
心も体も自分のものじゃないと許せない………これは俺もカインも多分同じだよ」
一瞬きつくなった腕に背骨が痛む。
「欲しいものなんて殆ど叶えられるし、願いもそう。
ミラはそんな男から逃げる?」
最後は耳元に囁かれ、
あっさりと敗けを認めた。
「できないよ」
出来るわけがない。
逆にしがみつかなきゃ一緒にいられないだろうと思う。
彼じゃなきゃだめで、手を離せば二度と掴めないような人なんだ。
ぎゅっとしがみつくように抱くつくと、ふわりと体が浮いた。
「ミラ、誰にも邪魔されない所に行こう?」
色気のある声に否定の言葉を紡げるほどわたしは大人じゃなかったようで、大人しく頷くしか出来なかった。
小さくノックした後に扉が開く、
「………ニル様?」
イシュは誰もいなくなった部屋に入り首を傾げて、寂しく戻るしかない自分に仕方ないと納得した。
料理はしまっておけばいい。
仕事は沢山ある、敬愛する王の伴侶のために頑張る。
貢ぎ物をしてくる同族たちを迎える準備をしよう。
イシュは小さな体に気合いを入れた。

