妖精なアイツ【完全版】

私が向かったのは、とあるマンション。
インターフォンを押して、返事を待つ。


「ここは…誰の家なんだい?」


私は黙って、ドアが開くのを待つ。


「…はい?」


ドアが開いて、顔を出したのは、のり姉だった。
のり姉は、突然の訪問にビックリしたのか、少し固まっていた。


妖精も同じく、黙ったまま立っている。


「二人で、遊びにきたよ。」


私はそう言って笑った。
のり姉も笑って、中に入れてくれた。


「どうしたの?突然。」


のり姉は、私達にジュースを渡すと、既に開いていたシャンパンをグラスに注いで、飲んだ。


「のり姉…今日、家にいるかなって思って。」


私がそれとなく言うと、のり姉は苦笑いした。


「バレてるんだね…。うん、ちょっと…喧嘩しちゃった。」


「「喧嘩?」」


私と妖精は身を乗り出して言った。
乗り出した体を元に戻して、ひと息つく。


のり姉は、そんな私達を見て、少し笑った。



「距離をおこうって…言われちゃった。」


のり姉は、俯いて、言った。


“距離をおこう”…そう、染五郎さんが言ったの?


…なんで…。


「…なんで…。」


妖精も、そう言葉を漏らし、俯いて下を見ている。


「なんでかは…答えてくれなかった。…なんでかな。」


のり姉は不安そうな顔で、また俯いた。