妖精なアイツ【完全版】

「ミッキー!」


ハチ公前、5時55分。
妖精が来た。


ライブの時のような、カジュアルな格好で。


「あの格好が気にいってるんちゃうかったん?」


「そうだね!でも、あの格好は学校のみで我慢するよ!もともとはグレる為にあの格好にしたんだからね!」


「リーゼントとかにすれば良かったのに。」


「ありきたりすぎるじゃないか。」


妖精はそう言って笑った。


「お腹は空いてるかい?」


「え…。ううん、まだ。」


「そうかい?じゃあ、あそこの並木道行ってみないかい?ライトアップが凄いらしいんだ。」


…やっぱ、デートみたいだ。


なんとなく、笑顔になる。
…って、そんな場合じゃないんだった。


「おお、凄いね!」


妖精はライトアップされた並木道を歩いてはしゃぐ。


「ほら、ミッキー。見て……、ミッキー?」


「…あのさ、ヒカル。」


私は真っ直ぐ妖精の目を見て、口を開いた。


「私、行きたい所があんねんけど…」


私がそう言うと、妖精は小さくまばたきをした。