妖精なアイツ【完全版】

「え…なんで…。」


私は、ハッとして口を押さえた。


兄貴は染五郎さんとのり姉が付き合ってる事を知らない筈だし、聞いてはいけなかった。



「…のり姉と、喧嘩でもしたんちゃうか。」


「…え?兄貴、知ってたん?」


「ダテにソーメンと親友やってる訳ちゃうぞ。お前はのり姉から聞いて知ってるんやってな。ソーメンから聞いた。」


親友、やったんか…。
って、そんな事は今、どうでもいいんや!


「なんで、のり姉が仕事で過ごせない…とかじゃなくて?」


「仕事は、夕方には終わるって行ってたで。それからでも過ごせる筈やろ?」


でも…でも…。
何が原因で…。


「何があったんかは、教えてくれへんかったけど、多分…なんかはあったんやろな。」


兄貴が珍しく、真剣な顔をする。


「お前がそんな顔すんなや。ソーメンには俺がついてるから大丈夫や。」


兄貴は私の頭をポンポン、と叩く。


「心配や…。」


「おい。」


頬を抓られ、“痛い痛い”と暴れていると、家に着いた。


「今日の夕方から、家でソーメンと過ごすわ。お前は王子とデートやろ?」


「う、うん…。」


「まぁ、帰ってこんでも、俺からおとんとおかんには上手い事言っといたるわ。」


ニヤニヤして、私を見る兄貴を無視して、家に入る。


のり姉と…染五郎さん、大丈夫なのかな…。