妖精なアイツ【完全版】

私はひざ掛けを体いっぱいに巻き付けて寒さをしのぐ。


「う~っ、寒っ!!やっぱ暖房の前行こうっと。」


「あ、ミッキー。今日の約束忘れないでね。」

う……。


ピタ、と止まり、振り返る。


「忘れてへんよ。ハチ公前やろ?」


「そう!楽しみにしてるからね!」


…楽しみ?
ほんまに?


胸がギュッと締め付けられるような、感覚がした。
ほんまは、のり姉と過ごすのが、一番嬉しい筈なのにな。



午前中で終わった終業式。
大きな荷物を持って、家に帰る。


「よー!美希!今帰りか?」


ステップを踏んだ兄貴が、私の肩を叩いた。


「うん、兄貴も?」


「そー!今日は、予定変更して、男同士で過ごす事になってん!」


兄貴はニコッと笑って指を鳴らした。


「へえー?本当は女の子と過ごすのは嘘やったんちゃうん?」


私はケラケラと笑って兄貴を突いた。
兄貴はガハハ、と笑って、私の頭をグーで殴った。


…めちゃ痛い。


「な、なにすんねん。」


「友達は大事にせなアカンやろ!今日、ソーメンの奴が、柄にも無く暗くてやなー。いつもこう、爽やかーって感じやのに。」


…染五郎さんが?


何で…。


「クリスマス、一人っていうから、付き合う事にしてん。」


クリスマスに…一人…?
染吾郎さんが?