「お、ミッキー。桃子から聞いたか?」


教室に入ろうと思ったら、夏男に後ろから声をかけられた。


「うん、聞いたけど…私、今年は…」


「…ああ。」


“…ああ”って何!?


「ちゃ、ちゃうねん!たまたま…」


「…何も言ってないんだけど」


夏男はニヤニヤしながら言う。


ちちちちちがうのにい~!!


夏男はその後は何も言わず去って行った。


私は夏男に手を伸ばし、誤解を解こうと思ったが、その手は行き場を無くした。


妖精と、クリスマス…。


別に、否定する事も、肯定する事も無いんやけど。
一緒に過ごすのは、まぎれも無い事実なんやし。


でもそれを、“好きだから過ごす”と思われるのは、ちょっとシャクやねん。


妖精はただ、“のり姉が好き”だという事実を知ってしまった、ただの理解者としか思っていない。


「…なんか、それって悔しい。」


何で悔しいのか、それはよく分からない。
ただ、悔しいという気持ちが、私のなかにあった。



「美希!今帰りなん?」



下校と中の校門前で、兄貴に会った。
兄貴はニコニコと笑って近付いてくる。


「一緒にかえー…ぐほっ!!」


私は兄貴の脇腹に拳をぶつけた。


「お前…優しいお兄様に何て事すんねん!」


兄貴はお腹を押さえてフラフラと立っている。