妖精なアイツ【完全版】

すこし落ち込んだあと、教室を出る。向かうのはトイレ。


この気持ちと一緒に、流れていってくれればいいと、トイレで用を足す。


「ふー、スッキリした。」


手を洗って、トイレを出る。


「美希、お前…女の子がそんな事言うなや。」


男子トイレの方からは、眉をハの字にした長谷川が出てきた。


「だって、スッキリしてんもん。」


「お前、絶対将来は典型的な大阪のオバちゃんになるぞ。…あ、そや。毎年チョコくれてたやん?今年は無いの?」


そういえば、兄貴とお父さんのついでに、長谷川にもあげてたな。


産まれた頃から一緒やから、家族みたいなもんやし…。


「ごめん…、今年は…」


「えーっ、もしや、本命一本で行くん?誰?」


ここで、妖精だと言っていいものか。


「ひ…ひみつ。」


ちょっと肩を上げて、アゴを引く。


我ながら、キモイ。


長谷川は目を点にして、目を細めて私を見ていた。