妖精なアイツ【完全版】

「あれ?二人共、もう買ったんや。早いね?」


「ミッキーが長いんだよ~。そんなに悩んで、だ・れ・に・あげるのかな~?」


桃子はニヤニヤしながら突いてくる。


「桃子こそっ!誰にあげるの!?」


「えっ!?」


…カアッ。と、みるみるうちに桃子が赤くなっていく。


…ナオみたい。


「まさか、本命…いるの?」


桃子はコクン、と頷いた。


そっか…、やっぱ、いるんだ。


「ってゆうか、ミッキーはヒカル様に、だったね!聞かなくても、知ってたんだった!」


桃子はケラケラ笑って、スキップした。


確信を突くような事は聞けなかったけど、桃子に好きな人がいるって聞いて、なんだか嬉しかった。


バレンタインデー当日の朝。
私は、鞄にバウムクーヘンを忍ばせる。


教室に着くと、椅子に座って、机に倒れこむ。


「ミッキー、どうしたの?緊張してるの?」


桃子は、私の顔を覗きこんで、心配そうな顔をする。


「ううん、昨日…兄貴にチョコあげないって言ったら、怒られてさ。兄貴、チョコ好きだから。…ワカメのくせに。」


「ありゃー。で、喧嘩しちゃったんだ?」


「うん、だから、兄貴の分だけ特別に買って帰るよ。」


「そだね。ごめん、私が本チョコだけって言っちゃったから…」


「ううん、いいよ。桃子は?もう渡したの?」


「…まだ。」


そう言って桃子はパタパタと、音を鳴らして戻っていった。