『母が再婚して
オレが生まれたのは、兄さんが高校の時。
兄さんは東京の専門学校を受験して
一人暮らしをはじめたんだ。
学校が休みになっても
殆ど家には戻って来ないから
オレが兄さんと会うのは
年に1度あるかどうかだった』
『そうだったんだ…』
瞬くんは眼鏡をテーブルに置き
指を組んで話を続けた。
『兄さんは結局、家に戻る事なく
就職して…独立して…
オレも3年前
高専に入学することになって…
こっちで寮生活する事になったんだけど
あまり兄さんと、会うことはなかった。
それが去年、父親が事故で死んで…
突然だったし、
オレも母も、
これからどうしたらいいのかわからず
途方に暮れていた。
学校を続けるのか
辞めて働いた方がいいのか
そんな時
兄さんがオレに連絡をくれた。
…それからなんだ
こうやって頻繁に会うようになったの』

