アタシは、興奮していた。


『奈緒すごいよ。感動したよ』



『こまちちゃんったら、さっきから大袈裟。
でも、そう言って貰えて、うれしいな…』



『アタシね、音楽はあまり興味無かったけど…
今まで、結構な種類は聞いていると思う。

一流演奏者のジャズだってCDで聞いたもん。

でもね、今日みたいな感動は、なかったの。
ホントだよ。

さっきはね、なんて言ったらいいんだろう…
心が震えたの!』



『そっか…こまちちゃん、
生演奏は初めてなんでしょ。

だからだよ。

CDじゃ感じない、楽器の音の振動が
空気を通して、じかに体に響くんだよ』




『んー…よく分かんないけど…
とにかく、すごくよかった。

…で、奈緒、ジャズ研に入るの?』


『…どうしよう…迷ってるの』


ふうっ…と奈緒は、ため息をついた。



『卓己くん?』


奈緒の頬が、また赤くなる…


『えへへ…ばれちゃった。

卓己くんとは幼なじみなんだ。
誘われて…うれしくて見学に行ったんだけど…

入部までは考えてなかったの…』



『でも、見学してみたら…
考えていたより魅力的なクラブだった…でしょ?』



アタシの言葉に奈緒は黙って頷いた。