『卓己くん、この後は?』
『ん…研究室に戻るかな。
まだ調べもの残ってるし、桜木は?』
『帰るよ。
これからケイちゃんのスタジオなの』
『忙しいのか、仕事…』
『ううん、今日は手伝い。
ケイちゃんからの頼まれ仕事は
全部ボランティアよ、少しでも恩返し』
大学入学を期に
アタシはケイちゃんのマンションを出て
大学の近くで1人暮らしを始めた。
そういっても
電車で1時間かからない距離だし
なんだかんだと頻繁に会っている。
『ケイちゃん結婚するんだ』
『…?松木さんの…?』
『そう。瞬くんのお兄さんと。
アタシがマンションを出てから
ケイちゃんったら、やたら寂しがって…
大介さんの所に居座るようになったの。
いいキッカケだったのよ。
このまま一緒に住むのなら
籍入れてしまおうって…
トントン拍子で決まったのね』
『へぇ…そうなんだ。
桜木は平気か?
…そのぉ、親戚になるわけだろ?』
『瞬くんの事ね…?
平気だよ、もう気にならないモン。
アタシの中では、完結した事だから…
未練とかも無いし、もう。
それに、身内になるっていっても
親戚行儀がある時ぐらいしか
会うことも無いだろうしね』

