『それでは…
30分くらい待ってて下さいね。
お母さんの体に付けてある
チューブや機械を外して…
キレイに体を拭いてきますから』
ママくらいの年齢かな…
看護婦さんは丁寧な口調で説明して
アタシ達に頭を下げた。
『よろしくお願いします…』
ケイちゃんはハンカチを握りしめ
涙声で頭を下げた。
ママを乗せたストレッチャーが
ICUから運び出された。
ストレッチャーのキャスターの
きしむ音が廊下に響き渡り
間もなく、エレベーターに消えた。
間に合わなかった…
アタシ達が病室に入った時
ママのベッドの脇にあった
人工呼吸器のポンプの音が止まってた。
ママの目も閉じていた。
ケイちゃんは、ママの頬をさすり
泣きながら話しかける。
『姉さん、ごめんね。
1人で寂しかったね。
でも、そっちには
父さんも母さんもいるから
大丈夫よね。
まだ…温かいのに…
こまち、こっちにいらっしゃい…
声かけてあげて』

