『さぁ、戸締まりして
病院へ行きましょう』
ケイちゃんは台所で
コンロの元栓を締め
湯沸器の電源を切った。
部屋の窓を閉めて回ったアタシは
自分の部屋にはいった。
狭いアパート。
きっとアタシの部屋の荷物は
キレイに片付けられて
彼の部屋にでもなっていると思ってた。
意外な事に
出て行った、そのままの状態で
アタシの部屋は片付いていた。
『わぁ、簡素な部屋…
ここ、こまちちゃんのだろ?』
大介さんが入ってきて
周りを見渡した。
机に置いてあるのは
古い形の電気スタンド。
その横に積まれた段ボールには
教科書や本が詰め込まれてた。
『マンションに持っていかない物は
全部捨ててきたから…』
そう話しながら
段ボールの前にしゃがんだ。
『この…本と教科書以外は…』
幼い頃からの、アタシのトモダチ達…
自分で捨てる事が出来ずに
ただ箱に詰めてよせてた。
捨ててもいいように。
『…捨ててなかったんだ、ママ』
胸が、トクン…と波打った。
脳裏に浮かぶのは
病室で見たママの顔。
半分開かれた、うつろな黒い瞳…

