久しぶりにアパートの前に立つ。
比較的静かな住宅街。
白いサイディングの外壁が
風雨に曝され灰色の寂れた色に変色している。
築14年、3Fの角部屋2LDK
ここが、アタシとママの家。
鍵を回してドアを開ける。
慌ただしく運ばれたせいか
居間への戸は開けっ放し。
居間を覗くと
閉め忘れた窓から風が流れ
カーテンがヒラヒラと揺れていた。
アタシは無言で居間に入り
通り抜けて奥のママの寝室へ向かった。
起きたままの状態のベッド。
サイドチェストの上には
脱ぎっぱなしの服が
無造作に投げ掛けられていた。
アタシは洋ダンスの扉を開けて
ワニ皮のハンドバックを取り出す。
マグネットのベルトを外して
財布を引っ張り出し、中を確認する。
わずかな現金と
数枚のカードの中に保険証を見つけた。
そして、小銭入れの中から
小さな鍵を探し出し
洋ダンスの服の下に置かれている
ジュエリーケースの扉を開けた。
ママのアクセサリーは
イミテーションの安物ばかり。
小さな箱をよけると
わずかな蓄えが記された通帳と印鑑が
銀行の封筒の中に入っていた。
『ママの貴重品はこれだけだよ…』
アタシはケイちゃんに
保険証の入った財布と銀行の封筒を渡した。

