マンションに戻るとケイちゃんは
仕事先や親戚、
アタシの事務所や学校などに
事情を説明する電話をかけまくってた。
ジーパンとTシャツに着替えたアタシは
ソファーに座り
テキパキと動くケイちゃんを眺めている。
玄関で物音がした。
大股で居間にむかって歩く
大介さんの足音が近づいてきた。
ケイちゃんは電話中。
ダイニングテーブルに手帳を広げて
背中を向けたまま話し込んでいる。
『こまちちゃん…
大丈夫か?大変だったな』
神妙な顔。
『ケイから連絡もらって。
車、置いてきたって聞いたから…
病院まで乗せて行こうと思って』
大介さんはアタシの隣に座って
心配そうに顔を覗き込んだ。
『いつ、容体が変わるか
先生もわからないって…』
『そっか…
じゃあ、そばにいてあけような。
こまちちゃんが、そばにいたら
お母さんも心強いだろうし』
『………うん』
集中治療室だから
すぐそばに、いてあげる事は難しいけど
せめて、少しでも近いところで
ママの事を想ってあげたかった。

