病院を出てタクシーに乗る。
ケイちゃんは泣いていて
運転する自信が無いからって言ってた。
あまり仲が良くない姉妹なのに
こんなに動揺するケイちゃんが意外だった。
夢の中にいるみたいに
アタシの頭の中は
ふわふわと意識が定まらない。
現実の状況が
どこか違う世界で…
自分とは関わりの無い世界で起きているようで
実感が無い。
ママの頬は柔らかく
ママの手はあたたかかった。
アタシ…
ママに触れたのって
どのくらい前だった…?
ずっと、むかし…
そう…
風邪をひいた幼いアタシは
ママに手を引かれ病院へ行った。
アタシはママの半分くらの身長。
ママの手を握り
見上げた記憶がある。
ママは、とても大きくて
頼もしい存在だった。
病院の待合室は
広くて暗くて怖かったけど
しっかりつないだ手が
アタシを落ち着かせていた。
アタシは、いつ
ママの身長を追い越したんだろう…
さっき、触れたママの手…
指の長さも、爪の形も
アタシと同じだった。
一緒に住んでたのに
そんなことさえも気付かなかったんだ。

