『クモ膜下出血です。
脳の血管の破裂で大量の出血がありました。
出血は脳の正常な働きを妨げてしまって…
今、君のお母さんは
自分で呼吸をする事が出来ない状態です。
そのため、機械で肺に空気を送って
心臓が止まらないようにしています』
先生は、アタシに言った。
『意識もありません。
目を閉じる事が出来ないので…
目が乾かないように
濡れたコットンで守っています』
そう言って先生は、また
ママの目の上に
そっとコットンをのせた。
『出血が止まりません。
アルコールの過剰摂取による
肝機能の障害が要因かと思います。
正常に血が固まらないのです…』
先生の声が遠くなる。
ケイちゃんと何か話しているけど
アタシの耳にぼんやり響くだけ。
アタシはベットの横にかがみ込み
ママの額にそっと触れる。
あたたかな柔らかい肌…
そのまま頬を撫でた。
手入れの行き届いたキレイな爪。
手に触れ指を握った。
反応は無く、握り返す事も無い…
どのくらい、そうしてたのか
先生の話が終わり
ケイちゃんに呼ばれるまで
アタシはママの手を撫でていた。

