『あれから、学校側からは?』


『うん、特に何も。
そういえば、ケイちゃんが
先生に会って事情話すって言ってた…

アタシさ、校則でバイト禁止だって事を内緒にしてたんだよね』


『けっこういるみたいだぜ。
隠れてバイトしてるヤツなんてさ』


卓己くんは立ち上がり
制服についた草をパンパンとほろった。


『署名持って行ったやつら
そろそろ戻ってるんじゃないかな…

様子みてくるわ、桜木も来る?』


『あ、アタシ…次の授業の教材を
職員室に取りに来るように言われてたんだ。
それ先に済ませちゃってから、行くね』


『おう、じゃあな』


食べ終えたお弁当を片付け
花壇の脇を抜けて玄関まで小走りで急いだ。


ポケットの携帯が震えた。
マナーバイブのライトが点滅している。

靴を履き替えながら携帯をひらく。

ケイちゃんから。


『もしもし?』


『昼休みよね?平気?』


『うん!大丈夫だよ』


『これから先生にも電話するから
職員室に寄って帰る準備しなさい。
迎えに行くわ、校門で待ってて。

…姉さんが倒れて病院に運ばれたの』


『…えっ…?ママ…?』


『意識が無いの…急いで』