ヌードなアタシ


奈緒は数人の子と、お弁当を食べていた。

目が合うと
口元だけ引き上げるように
少し微笑み、スっと目をそらした。


昨日の瞬くんの言葉を思い出す。

奈緒は、
自分から別れようと言ったらしい。

特に落ち込んでいる様子もなくて
時折、笑いながらおしゃべりをしている。


アタシはゆっくり奈緒から目をそらす。


視線を感じた。
卓巳くんがアタシを見ていた。

奈緒と話さなくてもいいのか?
卓巳くんは声を出さずにそう言った。

アタシは目を伏せて
微かに首を横に振る。



風が出てきた。

窓から入り込む風のおかげで
幾分、蒸し暑さも和らいだ。


机の上の写真のコピーが風で揺る。


髪が長い頃のアタシ…


まだ瞬くんと付き合う前。
常に奈緒と一緒だった。

この頃のアタシは失恋の悲しさも
初めての友達を失った辛さも知らない。


ほんの数ヶ月しか経ってないのに…


でも

クラスのみんなに助けられ
勇気をもらったこの幸せな気持ちも
知らないんだよね…


アタシはもう、
この頃のアタシじゃないんだ。

当たり前の事なのに
過ぎていく時間は戻らないんだって事を
実感し納得していた。