『私に父親はいません。
母親は、いわゆる育児放棄で
私は叔母と暮らしています。
水商売の母親に経済力は無く
私立高校である、この学校の学費や
大学進学の費用を
用意する意志もありません。
教育に対して
理解の無い親から生まれた子は
学びたいという気持ちを
持ってはいけないのですか?』
『……。』
アタシの問いには答えずに
先生は腕組みを外し
机の上に手を置き両手を組む。
『私は嫌です。
自分の将来は自分で決めます。
私は高校も卒業出来ず
母の店で酔っぱらい相手に
納得のいかない生活を
送らなければならないなんて嫌です。
私は医大に行き医者になります。
そのためには、進学校で学ぶ学費と
医大進学の学費を準備しなくてはなりません。
今、一緒に住んでいる叔母は
写真家です。
初めは叔母の手伝いから
モデルを始めました。
せめて生活費くらいにでも
と、いう気持ちからでした。
でも、大学進学を決めた今、
叔母の手伝いだけでは
学費をまかなう事は出来ません。
叔母の友人の
モデル事務所に、お世話になり
学費を貯めています。
モデルは、あくまでも学費の為
勉強が、全てにおいて優先です。
お願いします、先生…
私から将来の夢を奪わないで下さい。
仕事は選んでいます。
学園の名に恥ずべき事はしてませんし
これからも、それは変わりません』

