『アタシも同じモノを…』
『あまり、食欲ない…か。そうよね』
長澤さんはグレープフルーツジュース2つと
カウンターに向かって注文して
バックの中から煙草を取り出した。
『あ…長澤さんって
煙草吸うんですね。初めて見ました』
長澤さんが事務所で
煙草を吸ってる姿を見た事が無かった。
『そうね…
仕事中は吸わない事にしているの。
プライベートな時間の時だけ。
…吸ってもいいかしら?』
『はい』
アタシはニコリと微笑む。
長澤さんは細長い煙草を
ケースから取り出し
銀色のライターで火をつけた。
『こまちちゃん、
ため息なんてついてちゃ駄目よ…』
軽く吸い込み細くふぅーっと煙を出す。
『すぐに、素敵な人が現れるわよ。
暗い顔してちゃ誰も寄って来ないわ。
スマイルよ、スマ~イル』
指先で煙草を挟みアタシを見る。
『プロ根性よね…
泣きたいところをコントロールして
オーディションに臨んでくれたのは立派よ。
泣き腫らした顔で来られたら
目も当てられないもの』
『泣かなかった訳じゃないんです。
結構、思いっきり涙出ちゃいました。
でも…夜は泣かないように
考えないようにしました。
…辛かったです』

