ケイちゃんが帰って来たのは
アタシが戻ってから30分位経った後。
アタシは御飯のスイッチを入れ
ほうれん草のおひたしを作り
砂抜きされていたアサリを
沸騰したお鍋に入れるところだった。
ケイちゃんは両手いっぱいに持ってた
ファイルやバッグをソファーに置き
神妙な顔でキッチンに来た。
『おかえり』
アタシは笑顔で迎える。
拍子抜けしたようにアタシを見て
鍋の中を覗く。
『何作ってたの?』
『これね、アサリの味噌汁。
おひたし作ったから…
あと、冷蔵庫のお魚焼けばOK』
『…うん。そっか』
ケイちゃんは、魚を取りだし
グリルに入れた。
『わたしの言い方悪くて…
姉さんを挑発してしまったみたい。
ごめんね…
売り言葉に、買い言葉よ。
本心じゃない。気にしないで…』
『…ん、平気。
帰る途中、瞬くんに
ぶちまけちゃった。
そしたら、なんかスッキリした…』
『あら、うふふっ
瞬くんは、災難だったわね』
ケイちゃんの横顔…
笑っているけど、ひどく疲れている。
ママとの亀裂が
より深くなってしまったのは明白で
ケイちゃん自身
戸惑っているようだった。