ガンを飛ばしてみるものの、それをこの男は楽しそうに笑い始める。
「うわー。一応俺先輩なんだけど?俺2年、ジュノちゃん1年。ね?」
ね?じゃねぇよ。マジキモイ。
この余裕さもホント、ムカつく。
ムカつくが、早く帰る為には反抗的な態度は自重するべきだ。
「返して下さい肥後先輩」
しおらしく言ってみたのだが、奴はホントに、変態だった。
「良いけど、条件がありまーす。あのね。
ワンと鳴け!」
あまりにも楽しそうに言うもんだから
つい、股間に蹴りを入れてしまった。
「いってぇ…!!」
股間を抑えながら、人気の多い廊下をゴロゴロと転がりまわる姿は正に滑稽だ。
「…じゃあ先輩さようなら。お元気で」
タイミング良くその手からイヤホンをむしり取って、
駅前で貰ったカードローンのポケットティッシュを取り出し、イヤホンを拭いた。
出来る事なら消毒もしたい所だが…まあ、良い。
再度右耳にねじ込んで その場を去った。



