「いいや、もう。先帰るわ。
母ちゃんが今日ハンバーグ作ってくれるらしいから」
「はぁ!?ハンバーグってなんだよ。
俺とハンバーグとどっちが大事なのっ!?」
「うるせぇハンバーグだ馬鹿野郎」
オカマ口調にイラっときて、カッコ良くはなかったが捨て台詞を吐いて
さっさと教室から出てやった。
後ろの方からミツの焦った声が聞こえてくる。
「いや、ちょ、待って下さい!!今、ほら、ね?鞄の中に雑誌を……。って居ねぇ!!
おい!!待ってってば!!ジューーーノォォォ!!!」
五月蠅いな。人の名前を大声で叫ぶな。
制服のポケットからiPodを取り出して、イヤホンを耳にねじ込んだ。
流れてくるのは激しいロック。もう、周りの声なんて聞こえない。
このぶっ飛んだ感じが好きだ。
誰にも干渉されないし、されてもシカト出来る。
聞こえてないし、聞こえないふり。
誰もあたしの境界線を越えられない。
……筈だったのに。



