苦い舌と甘い指先





やたらと真剣な表情で見つめられて、なんて言って良いのか分からなくなった。



噂自体が嘘…って事か…?


でも、教室でコイツが倒れた時、女共は確かに群がって来て保健室に…



あれ…?けど、そのすぐ後の授業の時、コイツは屋上に居て……?



もし見境なしにヤりまくってる男だったら、喜んで女共とイチャコラする筈で。




「ワケ分かんね…」



難しい事はあたしのちいせぇ脳みそじゃ処理しきれなかったらしい。


考える事を放棄すると、ミツが静かな声で否定する。



「分かるだろ。コイツは嘘つきなだけだ。


俺は聞いたんだ、クラスの女の子に。

…みんなコイツにキスされて、ヤられてるって」



「……そうなのか?」


ミツが言うんだ。嘘ではないだろう。


コイツはあたしに嘘だけは付かない筈だから。だから信用してるんだ。



だけど、それすらも肥後は否定してみせる。



「……それは誰から?俺とヤったって、誰から聞いたの?」



「…プライバシーだ」


「俺の事なのに、今更プライバシーなんてあるんだ、へぇ…。


それとも……キミの虚偽だから…かなぁ?」


肥後はミツを小馬鹿にしたような笑いで見降ろす。


そういやコイツ、結構背が高かったんだなぁー…なんて、この険悪なムードの中で気付くなんて、あたしは空気も読めないらしい。


「…何が言いたい」



ミツが挑発に乗り、より一層ピリピリとした空気が漂った。