苦い舌と甘い指先





「な…っ」



誰だよマジで!!


チャイムが鳴り終えたかと思うと、今度は勝手に家の中に侵入してくる音が聞こえる。


…そういやドア開けっぱだった!



「……お前はここに居ろ」


「…え?」



言いながら肥後の体を退け、ベッド脇に立てかけていた金属バッドを手に取る。



「…ジュノちゃん?キミ、まさか…」



「うるせぇ。不法侵入者だぞ。死にたくなかったらあたしの後ろに隠れてるんだな」



「いや、そういう事じゃなくて、ね」




肥後が何かを言いかけた時、階段をどすどすと昇って来る足音が聞こえる。



あたしは物音を立てない様にドア付近まで移動し、ゆっくりとバッドを胸の前で構える。



「じゅ…ジュノ…さん…?俺、人が死ぬとこ見たくないんですけど?」



「……正当防衛だ。それに、胴を狙うから死ぬわけない」



後ろから『そういう事じゃなくて』とか何とか言ってたが、今この状況でコイツと会話する余裕はない。



足音が止み、ドアノブが回され そして




「テメェら―――…」


「おらぁっ!!!」



ダァァアアアアアンッ……



内側に開くドアだったせいで、木の扉にバッドがめり込んだ。



…あれ、さっきの声……。どうも聞き覚えがあると思っていたのだが、顔を上げるとミツが失禁寸前のキモイ顔で廊下に立っていた。



「なんだ、ミツか」



「……この状況で良くそんな台詞が出てくるもんだな、おい」