苦い舌と甘い指先





ガラガラと扉を開けると、もうそこには生徒も教師も居て


「あら、何処に行ってたの?」



なんて、返しに困る様な質問をして来た。



「えーっとぉ…、体育館裏…?」


「…どうして疑問形?まあ、いいわー。

……あらっ?写生道具は?」


「え?あ!!」


しまった。屋上に忘れて来た…!!肥後があんな事するから、いつの間にか落としてたみたいだ。


今から取りに戻っても、またヤツに捕まるだけだろうし…。



「…風に飛ばされて…?あ、後でちゃんと探してくるし!」



絵も描いてないし、すっげー良い言い訳だと思ったのに。




「……壊したのねっ」


「…へっ?」



おっとり教師が、あたしの言葉を曲解し始めた。


「そうよ…そうに違いないわ~っ!!おばあちゃんの名に懸けなくても~!!」



「いや、ちょっと、言ってる意味が…」


「いいえ、そうよ!絶対そうよ!!

無くした分、後で請求しますからねっ」


ええー…。持ってくるって言ってんのに…。


もう、何を言っても聞かないこの教師に、流石にいらいらし始めた時だ。



コンコン



扉を叩く、軽い音。