暫く睨みつけたり、強引に身体をどけようと力を入れてみたのだが
肥後はうろたえる所か、益々楽しそうに顔を歪めている。
「どけよ!!また股間に蹴り入れられてぇのか!!」
「それは嫌だけど…。それに、君の困ってる顔を見るのがとっても楽しいから止められないなぁ」
「…ドS!!」
「…それはちょっと違うかな?相手によってどっちにもなれるから」
お前の性癖が何だろうとどうでも良いんだよ!!とにかくどけ!!
ぐぐぐっ と力を入れて、自分の手の上にあるヤツの手をどかそうと躍起になる。
何でこんなに細いくせに力はあるんだよ!!
ミツなんかあたしに腕相撲勝った事無いのに!!
「ぐぬぅぅぅうう!!」
そんな声を上げながら、乗っかっている手だけに意識を集中させていた、その時だ。
「……駄目だよ。俺から目を離しちゃ…」
「あ…っ」
いつの間にか肥後が、あたしの体を後ろから抱き込む様な体制を取っていて
あたしの顔の横にヤツの顔があるという、何とも言えない状況だ。
耳に、ダイレクトに声が響く。
意外に低い肥後の声が、鼓膜に直接届いて脳まで刺激している様だ。
「は…なれろよっ」
「……どうして?」
どうしてじゃねぇよ!!フツーに考えて、こんな真似する奴は何処にもいねぇだろうが!!



