苦い舌と甘い指先





「何してんの?」



「何もしてない」



「………」


「………」




会話になんかして堪るか。




じゃあ、と言って再びドアノブを握りしめると



「ちょっと待ちなよ」



声と共に、肥後が上からひらりと下りてくる。階段も使わず、体一つで。


その高さの割には一切の負担を感じていない様子で、羽でも降りて来たんじゃねぇかと思う程に 軽い動きだった。



「…お前、やっぱり猫か」



「……そういう、突拍子もない事言う所が面白いよねぇ」


クスクスと笑っているが、その手はしっかりと、ドアノブを握るあたしの手の上に置かれていて。



「……何だこの手は」



「やだなぁ。キミを行かせたくないから阻止してるだけだよ」



「どけ」


「やだ」


「さみぃんだよ!!凍え死ぬ!」


「じゃあ俺があっためてあげる」


「消えろ」


「えーっ?」




……罵倒してるのに、何だその嬉しそうな顔は…!!


キモイ!!寒さとは別の理由で鳥肌が立つ!!