苦い舌と甘い指先






辺りを見回して人気が無い事を確認してから


「ちょっとだけちょっとだけ…」



屋上への階段を上った。




うちのガッコは屋上に高いフェンスが張り巡らされていて、生徒も気軽に利用できる事になっている。


授業中は一応鍵というものが付いているのだが



「ほっ」



ちょっとしたコツさえつかめば簡単に開いてしまう位に


ここのドアはかなりの老朽化が進んでいる。



今日もいつも通りにドアが開いた。



錆ついた音を立てながらドアが開く。




肌寒い風が、一瞬で体温を奪って行った。



「う゛ーーっ!!さみぃ!」


こんな事なら大人しく教室に居た方がマシだったかも。


引き返そうと思い、ドアノブに手をかけると……




「あれ…?…イケナイ子見ーっけ」



どこかで聞いた事のある声が、頭上から降って来る。


誰だよ、と思い上を見上げると…。




「……出たな、変態野郎」



チェシャ猫の様に白い歯を見せながら、ニタニタとあたしを見下ろす肥後が居た。