苦い舌と甘い指先





振り返った所には、ミツと、もう一つ…手に収まりそうな小箱があたしを見つめていた。



「コレ…クリスマスだから、プレゼント…。家に帰ってから、夏樹の後にでも開けて」


「お…おお、サンキュ……?」



手に取ると、小さな鈴の飾りがチリンと音を鳴らした。


「……やっぱり俺、夏樹ん所行ってジャケット取ってくるわ!!先帰ってて!」


「えっ?」


ミツの焦った様な声に顔を上げると、もうミツは走って行ってしまった後だった。



「はえぇー…」



「何、ソレ」


「わ゛っ!!!」


ずっと前に居ると思っていた肥後が、後ろからあたしの手元を覗き込んで居やがった。しかも何か不機嫌なんっすけど…!!!


「…ミツに貰った」


「……ふーん。ミツ、ねぇ……」


「んだよ…」



肥後はミツが消えた方向を見つめて、



「ついに、ってことかな。分かりやすいコだね」



って、いつものようにあたしには何がなんだかさっぱり分からない様な事をぼそぼそ呟く。


「…先帰っててって行ってたから、行くぞ。あたし道分かんねぇんだからお前が先頭になれよ」


訝しげな顔を奴に向けてやると、何事も無かった様にいつもの笑顔を浮かべてきて



「いこっか」


何だか落ち着かない心境で、眩しい程光るイルミネーションの中を二人並んで通り抜ける。



街中に流れる聞きなれた明るい曲が、何だかあたしをちょっとだけ、素直にしてくれてる様な気がした。