苦い舌と甘い指先




バタン。


靴も履かせてもらえず、全員を外に出した後、思い出したように靴を投げてよこされた。


暫くそこに立ちつくしていたあたしらだが、家の中からパリーンだのガシャーンだのと物騒な音が聞こえて来て、もうどうしていいのか分からん。



「あーっと……帰るか」


「ぶぇっくしゅん!!あ゛ーー…俺、中にジャケット忘れて来た…へっくちん!!」


「……寒い」


肥後を先頭に駅へと向かうが

がくがくと震えながらくしゃみをし続けるミツが不憫に思えて


「おらよ」


手に持っていたマフラーを投げてやった。


「ずるっ…いいの?」


「良いけど鼻水噴いてから使え馬鹿」


ついでにティッシュも渡してやる。なんて世話の焼けるヤツだ!!

そんなあたしのジト目にも気付かないミツは、笑いながら鼻をかんで


「へへへ…コレクリスマスプレゼント?」


って、何を思ったかティッシュを大事そうに抱きしめやがった。



「…そんなんでいいのか?駅前で配られてるティッシュだぞ?」


「良いんだよ…お前に今日何か貰えるってだけで嬉しいからさ…」


「はぁ…。どうでも良いから行くぞ」


ティッシュで喜ぶとは…ついに頭おかしくなったか。踵を返して駅へと歩みを進める、と。



「ジュ、ジュノっ」


ちょっと後ろにいたミツが裏返った声であたしの名を呼んだ。