苦い舌と甘い指先




そこで待っていたのは、絵に描いた様な成金だった。



「やぁ、いらっしゃい。夏輝のお友達がうちに来るのは幼稚園ぶりじゃないかい?」



でかいワイングラス片手に、もう片方はくるっと丸まった鼻下の髭を撫でている恰幅の良いオジサン。


コレ、なんかのコスプレ大会?


ナッティママもそうだが、こちらも負けずと二次元から飛び出して来たみたいだ。


「お…オジャマシマス…」


一応ペコリと挨拶をすると、パパさんはみんなを席に座る様に促す。


各々が好きな席に腰を据えた、とほぼ同時位に



「で、どれがワシの可愛い娘に手を出した畜生か?」



どす黒い感情をぶちまけるパパン。



えー…。なんかこっちも絡みづれぇー……。



「もうっ!言うにしてもタイミングってものがあるんじゃないの!?

パパの馬鹿!!もうなっちゃん口きいてやんないんだから!」



夏輝ィ…キャラどうしたぇ………



あ、自分ではあくまでもなっちゃんが良いのね。そこは理解した。



次々と混乱が押し寄せてくる夏輝一家の食卓。


当の本人である肥後は、ただニコニコと笑みを湛えたまま一言も発しなかった。


ミツなんて馬鹿だから、自分の事の様に冷や汗かいてやがる。馬鹿だから。



そんな微妙な空気から救ってくれたのはママだった。


「まぁまぁ、夜は長いんですから、今はその辺にしませんこと?あなた。夏輝にも愛想尽かされちゃいますよ」


「む。…まぁ、良いだろう。娘に手を出した輩は後でゆっくりと料理してやろう…。

ナッティ~!!今度好きな物買ってあげるから!機嫌直して~!!パパ、拗ねちゃうゾ☆」



……誰がつっこむんだ、おい。