苦い舌と甘い指先





おっと。声がでか過ぎたようだ。



「何何っ!?どうしたのッ!?」


夏輝が寄ってきてしまった。…いや、良いんだけどさ。



「いや…何でも……」


「何でも…って…」


しどろもどろ。


流石に会話の内容を夏輝に教えるわけにもいかんし…


だが、良い言い訳も見つからん。が。



「…俺が中学までサンタさん信じてたってハナシだったんだよ。

それでジュノさんに馬鹿にされたんです」


ナイスだ肥後!そのまま馬鹿キャラで通して良いんだぞ!!


相当苦しい言い訳かと思いきや


あたしの誤魔化し方の下手さからしてみると、肥後の苦しい嘘も信じられるみたいで。



「トシって意外と可愛いんだぁ…」



って夏輝はキュン死寸前の顔で悶えてたし、ミツは


「何だ。急に奇声発するから、とうとうジュノがイカレたんだと思ってた。

…にしても…ぶくくっ…中坊でサンタ…ブハッ…」


とか言ってあたしらの頭の血管を刺激してたが…まぁ、助かったから良しとしよう。


相変わらず肥後は良く分からん。寧ろ酷い男だと言う事が分かった。


面倒なら別れるなりなんなりすればいいのに…なんて、自分にとっても都合のいい展開を期待してる辺り、あたしも酷い女だ。


ひとつため息を吐いてから顔を上げると、皆はもう夏輝と共に扉の前に立っていた。


「もうご飯出来てるみたいだよー!良い匂いするッ!!」


早く早く、と夏輝に手招きをされて、あたしらは明るいリビングへと足を踏み入れた。