部屋の外に一歩出ると、あんなに五月蠅かった歌声が一気に小さくなって、何だか別の世界に来たみたいだった。




…ここに来る前はあんなに肥後と一緒に居るのが気まずかったのに。


っつーか、アイツの行動ホント読めない。



睨んで来たかと思えば、カラオケに着いてくるし。


あたしで遊び足りないからかと思ったけど、何かそんなんじゃないみたいだ。



なんて言うか……そう、普通の友達…みたいな?感じ。


こっちからしたらなんだソレって感じだし、あんな事されて平気でいられるわけが無いのに


アイツにとっては、あんな事は日常茶飯事で嫌がらせのつもりなんだから、色々と考え過ぎてるんだと思うんだけど…



あーーーーー。もう、いーや。



せっかく金払って来てるんだし、一曲位歌わなきゃ損だよな!!



よし。




ジュースを補充して部屋の前まで戻り、勢いよくドアを開けた。



「あ。」


「うわっ!びっくりしたー!!」


開け放ったドアの向こうには、夏樹が目を丸くして立っていて。



「ゴメン、ぶつからなかった?」


「大丈夫!でもびっくりしたよー!…お詫びに、トイレ付いて来てっ」


「え?はぁ…」



出た。女子特有の儀式だ。


「…いいけど、先にジュース置かして。便所に持っていくのは気持ち悪い」


「う…うん……」