ドクンドクン...
う、うわあ…
好きな人に話しかけるのって、こんなにも緊張するんだ。
私は心を一旦落ち着かせた。
「試合、お疲れ様」
精一杯の笑顔で そう言った。
「サンキュ」
市ノ瀬くんは口端を少しだけ上げて言った。
あれ…?
前にもこんなやり取りなかったっけ。
ああ。思い出した。
学級委員の仕事があった放課後だよね。
あの時も市ノ瀬くんは『サンキュ』て言ってくれた。
あの時の出来事があったからこそ、今私は彼のことが────
ダメっ。考えただけでもニヤけてしまう。
「次は女子の試合じゃない? 行こう、ひかり。あ、悠馬くんはゆっくり休んでね」
「ああ。じゃ…」
悠馬くんは右手を少しだけ上げて、私達に背を向け体育館を出て行った。
「何か……あたしの出番ない気がする」
隣から何故かテンション下がっている声が聞こえた。


